plastic surgery dermatology

【診療Tips】モーズ(Mohs)変法

モーズ軟膏(モーズペースト)

  • 乳癌、皮膚悪性腫瘍、転移性皮膚腫瘍の自壊した腫瘍部は、出血、浸出液、感染に伴う悪臭を認めることが多く、そのコントロールに難渋することが多い。
  • 自壊したがん皮膚浸潤への創管理方法の一つにMohs 変法がある。
  • Mohs 法とは、Mohs ペーストを用いて皮膚に表出した腫瘍を硬化させ切除することを目的とした化学的外科療法である。組織の硬化時間を調整し出血や浸出液、悪臭などのコントロールを行うMohs 変法が用いられることが多い。

 

レシピ

    • 塩化亜鉛      120g
    • 亜鉛華殿粉    60g
    • グリセリン    30ml
    • 精製水             60ml
      合計     220ml

このレシピは1つの例なので、所属病院の薬剤師さんに相談してください。
medical advisor


STEP 1

プラスチック瓶に精製水60mlを入れ、塩化亜鉛120gを少量ずつ加え溶解する。(→発熱する。塩化亜鉛 飽和水溶液を使用する施設もある)

 

STEP 2

放冷後、乳鉢に①の液を移し、亜鉛華殿粉60gをダマにならないよう少量ずつ加え、乳棒で攪拌する。(→だんだん硬くなる。亜鉛華殿粉の量が多いほど固くなる。)

 

STEP 3

②にグリセリン30mlを加え、粘度を調節する。全量220ml。(→乳鉢のサイズを要確認。)

 

STEP 4

少し大きめの軟膏つぼに入れ保存する。

 

STEP 5

使用時にグリセリンで粘度を調節する。(→保存しておくと硬くなるため。)

 



モーズペースト作成時には手袋を着用して作業すること。

塩化亜鉛は医療用外劇物なので管理に注意が必要。

薬剤部からグリセリンをもらっておいて使用時に粘度を調整するとよい。

豊見城中央病院では、塩化亜鉛 飽和水溶液25ml、亜鉛華殿粉5〜15g、グリセリン7.5mlで作成している。(友愛会 豊見城中央病院 医学雑誌 第3 巻 2015)

 

使用方法

STEP 1

内側にテープを貼った大きめのガーゼで潰瘍周囲の正常皮膚を保護する。(創から3〜5cm幅でマニキュアを塗布する施設もある。)

 

STEP 2

潰瘍部分にモーズ軟膏を塗布し、ガーゼで覆う。
(ガーゼで覆う目的は、創部からペーストが流れ出さないようにするためである。)

モーズ軟膏を塗布する。

ガーゼで覆う。

 

STEP 3

1時間放置した後、固定化した組織はガーゼに固着して剥離するもの、鑷子で軽くつまんで取れるもののみ除去する。十分に固定化され突出したものは剪刀で切除してもよい。
(放置時間=硬化時間は配合により異なる。6〜24時間としている施設もある。)

 

STEP 4

出血時の処置を適宜おこなう。

 

使用期限

  • 6ヶ月

 

臭い対策:ロゼックスゲル

  • 乳癌、皮膚悪性腫瘍、転移性皮膚腫瘍の臭いに対しては、メトロニダゾール白色ワセリン(orアズノール)混合軟膏を院内調剤で使用することが多かったが、処方可能なロゼックス®ゲルがマルホ株式会社より発売された。
  • 潰瘍面からの独特の臭い(がん性皮膚潰瘍臭)は、潰瘍深部の感染(BacteroidesやClostridium属)や腫瘍組織の壊死過程における代謝産物である脂肪酸類が関与していると言われている。
  • ロゼックスの主成分であるメトロニダゾールが嫌気性菌のDNA合成を阻害することによって静菌/殺菌作用を示す。

【参考資料】

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Shimpei Ono (Plastic Surgeon)

Associate Professor, Department of Plastic and Reconstructive Surgery, Nippon Medical School. He specializes in hand and foot plastic surgery, microsurgery, and reconstructive surgery, and is involved in clinical practice, research, and education. His research interests include the development of movable prosthetic fingers, VR education, application of 3D ultrasound and medical imaging engineering, and emphasis on PROs. He also has an interest in art anatomy and medical illustration, and lectures and writes about the fusion of art and medicine. In his educational activities, in addition to teaching students and residents, he is also involved in international medical exchange and disaster medicine as the director of the Association for Southeast Asian Medical Research (Ajiken).

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