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【診療Tips】"日帰り入院"だと保険会社からの給付金が受け取れる?

「先生、この手術は"日帰り入院"扱いになりますか?」

resident
この前、外来で陥入爪手術を計画したら、患者さんに「この手術は"日帰り入院"になりますか?」って聞かれました。詳しく聞いたら、"日帰り入院"だと保険会社からの給付金がでるみたいなんです…
なるほど。"日帰り入院"という用語は医療者でも知らない人が多いよね。近年、①医療技術の進歩(例:開腹手術→内視鏡手術)と、②国の医療費適正化政策によって、入院期間が年々短縮しているよ。その流れの中で、"日帰り入院"という新たな考え方がでてきたんだね。
medical advisor
resident
"日帰り入院"の背景にはイロイロありそうですね!詳しく教えてください!

 

ニッセイ基礎研究所: 入院日数を短くしようという動きがあるの?-医療の進歩と医療費適正化政策で入院日数の短期化が進行中-

 

 

背景にあるのは"入院期間短縮"の流れ

内視鏡手術

  • そもそも、諸外国と比べると日本は在院日数(=入院日数)が突出して長い。
  • 近年、入院日数が短縮されている背景には2つの原因がある。

医療技術の進歩:例えば開腹手術→低侵襲な内視鏡手術になったことで、早く退院ができるようになった。

政府による医療費適正化政策:国は入院日数を短くしようとしている。従来の日本の健康保険制度では、"出来高方式(=出来高制、入院期間が長いほど病院は儲かる)"が中心だったため、病院側に入院日数を短くするメリットはなかった。しかし、"DPC方式(=定額制、長期入院すると病院の収入↓)"の導入により、入院日数をいかに短縮するかが、急性期病院の経営上、重要になっている。

 

現場で働く医師の視点からは、近年の入院期間短縮の要因は②の影響が大きいね。例えばキズが完全に上皮化していなくても、外来で治療可能な状態まで回復した患者さんは、退院をすすめて外来通院に切り替えているよ。医師個人の判断というよりは病院としての方針だよ。
medical advisor
resident
特にご高齢の患者さんで「まだ心配だからもうちょっと入院させてもらえませんか?」って言われることもありますよね?
よくあるね。若干の微調整はするけど、国の方針で長期入院は難しいこと、外来で病状が悪化するようであれば再入院を検討することをお話しして、ご理解いただいているよ。
medical advisor
resident
日本の国民皆保険制度の影響もありますか?
とても影響しているよ。例えばアメリカでは医療費が超高額なので、患者さん自身が「入院期間を短くしたい」という思いが強い。一方日本では、ご高齢な患者さんほど医療費が安くなるし、高額療養費制度もあって金銭的なサポートが手厚いからね。入院していたほうが生活費が安くなってしまうようなケースもあるよ。
medical advisor

 

ニッセイ基礎研究所: 入院日数を短くしようという動きがあるの?-医療の進歩と医療費適正化政策で入院日数の短期化が進行中-

 

 

出来高方式 vs DPC方式

入院医療費に関するお知らせ – 光生病院

 

 

日帰り入院とは?

  • 入院日と退院日が同日の入院のこと。
  • 例えば、深夜1時に急病(例:腹痛)で入院したが、入院後に症状が改善したので、同日中に退院になったような場合。
日付が切り替わるのは0時なので、23時に入院して翌朝の9時に退院したような場合は、1泊2日になるよ(=日帰り入院ではない)。
medical advisor

 

 

入院が可能な医療機関は?

  • 医療機関は以下の①②に分けられる。

病院: ベッド数が 20

診療所(クリニック、医院):ベッド数が<19の有床診療所と、ベッドが0の無床診療所

  • 入院が可能なのは、病院有床診療所になる。
無床診療所で治療を受けた場合は、そもそも"日帰り入院"の適応外だよ。
medical advisor

 

病院と診療所の違い

 

 

日帰り入院の適応になる手術例

  • 内視鏡手術
  • 手外科手術(手根管開放術、腱鞘切開術など)
  • 鼠径ヘルニア
  • 痔核根治術
  • 抗癌剤等の化学療法  …等

ほけんスタート:医療保険:日帰り入院とは?対象外の事例と通院との違いを徹底解説|保険適用のために

ここでは"日帰り入院"の適応になる手術例を列挙したけど、日帰り入院の1番良い適応は、深夜に入院した急患患者で、日中には症状が改善したため同日退院した場合だよ。
medical advisor
あと日帰り全麻手術も日帰り入院の適応になる可能性があるよ。
medical advisor

 

 

入院の必要性は誰が判断?

  • 診察を担当したphysicianが判断。
日帰り入院の適応は"医師"が判断するよ。ただ現実的には、医師が「日帰り入院で」と言っても簡単に実現できるわけじゃない。日帰り入院を提供するためには、病棟、薬剤部、医事課など様々な部署が連携して対応する必要があるんだ。つまり病院・診療所内で事前にシステムが構築されていないとサービスの提供が難しい。現状では多くの病院で、日帰り入院のサービスは提供していないと思うよ。上記にリストアップした手術ばかりをおこなっている有床診療所のほうが、日帰り手術をやっている可能性が高い。
medical advisor
resident
日帰り入院のハードルは意外と高いですね…

 

 

入院を証明する書類

  • 医療費の請求書に入院基本料の記載があること。
  • 入院日と退院日が同一であること。

 

 

入院に便利なセット

ポケットWi-Fiがあると便利だね。
medical advisor

 

 


 

まとめ

resident
入院期間短縮の流れは今後も続くと思うので、日帰り入院を提供する病院・診療所は増えてくるかもしれませんね。
病院にとっても入院件数が増えると収入が増えるし、術後や病状の経過をみてから退院の判断ができるので安全面からもメリットが大きいね。
medical advisor
resident
患者さんにとっては、入院費で出費が増えるけど、保険で給付金がもらえるとなると、賢く医療保険を選ぶ必要がありますね。
医療保険を選ぶ観点からは、短期入院をカバーしてくれるプランなのか(=何日目から入院給付金が給付されるのか)が1つのポイントだね。
medical advisor

 

 

 

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Shimpei Ono (Plastic Surgeon)

Associate Professor, Department of Plastic and Reconstructive Surgery, Nippon Medical School. He specializes in hand and foot plastic surgery, microsurgery, and reconstructive surgery, and is involved in clinical practice, research, and education. His research interests include the development of movable prosthetic fingers, VR education, application of 3D ultrasound and medical imaging engineering, and emphasis on PROs. He also has an interest in art anatomy and medical illustration, and lectures and writes about the fusion of art and medicine. In his educational activities, in addition to teaching students and residents, he is also involved in international medical exchange and disaster medicine as the director of the Association for Southeast Asian Medical Research (Ajiken).

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